<ふくはまの風 第41号 2023.3.25>

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ふくはまの風第41号「どうしたの?」.pdf
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<ふくはまの風 第40号 2023.7.29>

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ふくはまの風第40号「地域住民としての出発」.pdf
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<ふくはまの風 第39号 2022.3.30>

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ふくはまの風第39号「人生のドアを開けるのは自分の意思でありたい」.pdf
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<ふくはまの風 第38号 2021.12.5>

「一人ひとりが望む生活と柔軟な対応」

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ふくはまの風第38号「一人ひとりが望む生活と柔軟な対応」.pdf
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 「私と共生」

<ふくはまの風 第30号 2017.1.10より>

  現在、私は磐田市中和泉のグループホーム“あしたば”で生活しています。グループホーム“あしたば”は、この私を含めて5人の利用者が共に生活し自分たちなりの自立を目指しています。

  この私も、日々の中で自分なりのライフスタイルで言葉という心のかたちを伝えるために好奇心の目を育てて、人間として尊厳と共生の在り方を見つめています。

  私が住むグループホーム“あしたば”は、2005年3月「社会福祉法人福浜会」にて設立されました。重度脳性麻痺の私は生まれてから40年間、両親と3人暮らしの在宅で過ごしました。しかし、30歳を過ぎた頃から私は親亡きあとの自分の居場所について考えるようになり、施設入居がどんなものか体験するために私はショートスティに行き、施設暮らしを間近で観て、やはり施設というものは障害者に対しただの牢獄で人間の権利や尊厳を持たないところであると感じました。

  私は5歳の時から磐田市に住み、両親が亡くなった後も住み慣れた磐田市に居たいという強い思いと、同じ思いを持つ親御さんたちとそして“福浜会”の髙橋和己理事長さんとともに磐田市にグループホーム設立を働きかけ、磐田駅から徒歩3分のところにグループホーム“あしたば”が完成しました。

  障害を持つ子を産み育てる中で世間や親戚からの偏見や差別に耐えながら歳を重ね、障害を持つ子の成長とともに親亡きあとのことを考え、障害が重度であればあるほどそれは切実な問題です。

  私の両親も“あしたば”での私の暮らしぶりを見届けて、きっと安心して天の国へと旅立って逝ったと思います。利用者の障害はそれぞれ違いますが、5人共前向きな精神で頑張っています。障害を持って生きる中で何が1番幸せであろうかと考えた時、私はやはり生活の基盤の大切さであると思います。

  それは、健常者でも障害者でも同じことで毎日生活する場が安定していれば心が自然と落ち着き健やかな精神が宿ります。

  昔に比べれば今の障害者はノーマライゼーションやバリアフリーの平等化が進み生きやすくなりましたが、しかしまだまだ11人の障害者にあったニーズは日本の福祉の力では望めません。

  そして障害者に対しての偏見や差別も無くなっていないのが現実です。グループホームを設立する段階で住民の人たちから強い反対があり、やむ得ず取り止めになるケースが多くあり、障害者を人間扱いしていない意識が根強くある証拠で、健常者というだけで障害者を社会から疎外した自分たちとは関わりを持ちたくない心がそこにあります。

  人間としてこの世に生まれてくれば、健常者も障害者も与えられる権利も選ぶ権利も同じ筈です。

  健常者という言葉と障害者という言葉がある限り真のノーマライゼーションはないと私は思います。

 “明日は我が身”という言葉があるように、いつ自分たちも病気や事故で障害を背負うかも知れないことを健常者と呼ばれている人たちにも解ってもらいたいのです。

  どんなに重度障害を持つ人でも住み慣れた地域の中で自分らしい生き方で生活できる場がもっともっと自然に増えてゆくことを、“あしたば”の生活の中で深く願うのです。

  私の当時の養護学校時代の尊敬する竹本路可校長先生の話された言葉の中で、「人は皆、何等かのかたちで、障害を持ってこの世に生まれて来るんだよ。もし自分だけは障害がひとつもないと思っている人がいれば、その人こそが本当の障害者だと僕はそう思う。」と穏やかな口調で話された竹本校長先生の瞳には暖か

な力強さが光っていたことを今でも私は忘れられません。

  神から与えられた私たち人間の生命は11人平等であり、また11人の存在価値も同じなのです。

  ノーマライゼーションの意味が日本にも段々浸透してゆく中で、健常者も障害者もなく人間11人の生き方が重視され差別や偏見自体が無くなる真の共生の世の中が来ることを私は信じています。

 

                                                                                                                                   岡本雅子

 

 

 

 

「魔笛」

<ふくはまの風 第29号 2016.8.10より>

 あれ?音が出ない。❝誰でも参加できます❞という菓音(カノン)のプランに孫たち(小学1年、3年)と参加しました。当初は一緒に演奏する予定でしたが諸事情で個別の演奏となり、孫たちのピアノ演奏の後フルートを吹き始めました。ところが易しい曲なのに思うように音が出ないのです。簡単な曲と軽い気持ちで臨んだのがいけなかったのか。

 好きな音楽で少しでも社会貢献をしたいとフルートを始めて20年。施設やイベント等さまざまな機会に演奏し、しかも一週間後にはフルート教室の発表会を控えてのまさかの出来事でした。反省から発表会では楽譜の左上隅に❝①舌の脱力 ②腹式呼吸 ③落ち着いて!❞とメモ書きして演奏に臨みました。メモ書きが効いたのか、本番では入り方もスムーズで自己採点では70点と、一週間前の失敗を生かすことが出来たと思っています。

 趣味でリコーダーも20年近く吹いています。縦笛のリコーダーはフルートに比べ指使いは比較的難しい(フルートは演奏し易いようにキーが配置してある)が、とにかく息を吹き込めば初心者でも音は出ます。一方横笛のフルートは、私だけかもしれませんが、状況によって音の出ないときや極端に音質が悪い時があり、私にとってはまさに「魔笛」です。ただフルートはリコーダーの2オクターブに対し3オクターブの音域があり、ほとんどの曲を一本の楽器で演奏できること、また優しい音色にも関わらず比較的大きな音を出すことができ、コンパクトでどこへでも気軽に持ち運びができる点など、音楽を生かしたいと考えている者にとっては最適な楽器です。松ぼっくりの地域交流会でも2,3年前にフルートコーラス「ゆりかご」のメンバーとして演奏しましたが、またいつか皆さんに良い演奏をお届けできたらと思います。

 さてこの「魔笛」と闘いながら?楽譜の左上隅に❝①右手親指の位置②舌の脱力❞と魔よけの呪文を書いて、現在❝「タイス」の瞑想曲❞に挑戦しているところです。

 

           福田地区民生委員児童委員協議会会長    伊東茂壽

「新しい年を迎えて~制度改革への思い~」

<ふくはまの風 第24号 2015/1/15より>

 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

 新しい年を迎え、皆さまには健やかにお過ごしのことと存じます。当法人は平成6年12月に設立し、昨年12月でちょうど20年が過ぎました。法人としてここまで続けて来られたのは、利用者さんとご家族、そして周囲の関係者の方々に支えられた結果だと感謝申し上げます。

 はまぼうがスタートした平成7年の頃は、「施設福祉から在宅福祉へ」と流れが変わりつつある頃で、各市町に小規模授産所ができていましたが、障がいの重い人が利用する通所施設はまだ少ない時代でした。障がいのある人が、この地域で暮らしていくための拠点としての役割が果たせたなら、というある意味大それたことを考えつつ法人を立ち上げたことが思い出されます。

 スタートからのこの20年間に、「措置制度」から「支援費制度」そして「障害者自立支援法」「障害者総合支援法」と、目まぐるしいほどに制度の変化があり、また障害者虐待防止法、差別解消法などの法律の成立や障害者の権利条約批准などに見られるように、障がいのある人を取り巻く環境も大きく変わりました。「ノーマライゼーション」「インクルーシブ教育」「共生社会」「社会的障壁の除去」「合理的配慮」「意思決定支援」などがそのキーワードとしてあげられ、障がいの有無に関わらず、一人ひとりの違いを共に認めたうえで、その人の生活や思いに焦点を当てていこうという、社会全体としての方向性が打ち出されています。

 このような流れは、一人ひとりの個別支援を基本に活動を行ってきた当法人としては望んできたことですが、とは言ってもこれからの変化は、痛みや戸惑いを伴うもので、時を経て気が付けば、制度に翻弄されている自分たちの姿を目にして「はっ!」としたことも正直ありました。それに気付くたびに、利用者さんやご家族と向き合う基本に戻ることを心掛けてきました。

 現在、障害福祉サービス事業や社会福祉法人の在り方をめぐって、国にさまざまな動きがあります。そこで感じるのは、利用者さんやそのご家族と関わる中でそのニーズに応えようと努力してきた自分たちに置かれている場が、こんなにも危ういものなのか、そこに現場の確かな情報が届いているのだろうかといった疑問やもどかしさです。地域の中でこういう努力をしていますよという個々の法人の情報は届くべくもなく、十把ひとからげに判断される。もっともっとそれぞれの地域の状況を発信していく必要があるのだと実感しています。

 また、施設の役割も、施設の活動を充実していくことは言うまでもなく、地域で暮らしていく上での支援(サービス提供)や在宅の人たちへの支援、そしてその裾野を広げていくことが求められています。それが、今社会福祉法人の役割として問われている「地域における公益的な活動」のひとつです。

 今後も、さまざまな状況の変化(改革)が予想されます。障がいのある人やご家族とともにお互いに支えあう関係を持続しつつ、歩みを進めていきたいと思います。

 

                                    (高橋)

「まずは足元から」

<ふくはまの風 第19号 2013/1/18より>

 皆様と共に社会福祉法人福浜会の事業所及び施設が、恙なく新年を迎えることができましたことは、皆様の温かいご支援、ご厚情の賜物と、心より御礼申し上げます。

 また、昨年は、多くの皆様に当法人をご利用いただいたこと、また、各種行事にもご家族様、そして地域の皆様にご協力いただきましたことを深く感謝致します。

 さて、今年は平成25年。これまでの障害者自立支援法に変わり4月から障害者総合支援法が施行される年であります。これまでの「自立」という言葉の代わりに、「日常生活及び社会生活を総合的に支援」の「総合」が入った名称に変わります。誰もが疑問を持った自立支援法が廃止と決まったときには新法に期待をしましたが、残念ながら改正という程度のものであるようです。障がいの範囲や支援体系などいくつかは修正されていますが、特に問題となった障害程度区分は、「障害支援区分」(2641日施行)に名前が変った程度のようで、自己選択・自己決定への障壁はまだ無くなりそうにもありません。ただし「この法律の施行後3年を目途として、障害支援区分の認定を含めた支給決定の在り方について検討を加え、その結果に基づいて、所要の措置を講ずるものとする。」と添えられており、わずかな期待は持てそうです。

 以上、障害者総合支援法について簡単に触れましたが、どんな法律であっても私たち支援する職員が自分たちの役割を果たしていないことには、良い支援はできません。サービス管理責任者という役職にある私には、利用者さんがいきいきと過ごせるサービスを選び個別支援計画を作成するという、責任ある務めがあります。もちろん計画もですが、私を含め職員一人ひとりがスキルアップをし、チーム一丸となって、まずは足元を固めることが大切なのではないでしょうか。

そこで、潮の香では前年度から、自分の支援のあり方を見つめ直す機会として「笑顔で元気に挨拶をする」「利用者さんは~さんで呼びましょう」、「細かなことでも職員間で必ず報・連・相をしよう」など基本的なことを[職員の今月の目標]と決め実践しています。その結果、職員全員が同じ方向を見ているという一体感や、目標の成果が出たときの達成感などを得ることができています。また、月に一度、ひろ道ウォーク(地域を散歩しながらごみ拾い)を行ったり、個別体験(個人か少人数で希望の体験)を実施したりと、少しずつですが新しい活動にも挑戦しています。まだまだ手探りではありますが、地域との関わり作りや利用者さんの笑顔を増やせるような活動を、これからも続けていきたいと思います。そして、少ない職員数だからこそのチームワークを活かし、「潮の香が大好き!」と言ってくれるような施設を目指して頑張っていく思いでおります。

今後とも皆様には福浜会に温かいご支援ご協力を賜りますよう心からお願い申し上げます。

潮の香 飯田重幸

 

新たなスタートに向けて

<ふくはまの風 第18号 2012/6/15より>

 平成24年度は、法人内において2つの施設整備が行われました。はまぼう及び潮の香の増築工事です。新たな場所で活動を行う環境が整備されると同時に、昨年の3.11東日本大震災を受けて、避難場所としての機能も考慮した建物です。また長年はまぼうには屋根がなかったため、車椅子利用者の方の雨天時の乗降に支障があったのですが、それも解消しようと1階部分はピロティとなっています。しかし発表された津波高を考えると、利用者の方のために安心を得るには、まだまだすべきことがあるというのが実感です。

また、法人内で唯一旧法施設であった松ぼっくりが、今年度生活介護事業に移行したことで、法人運営の施設全てが、新しい事業体系の事業所となりました。これを一つの契機として、改めて地域のニーズを受け止めていくという視点を持ち、それぞれの施設のこれからの方向性を考えていく時期にあると受け止めています。

それぞれがどのような人を利用対象として受け入れていくのか、その特色を活かしてどのようなプログラムが用意できるのか、そこで活動する喜びをともに感じながら過ごすにはどんな工夫が必要なのか、どのような障がいのある人に対してもその意思を大切にした支援ができるのか・・・。

各施設が持ち味を発揮し、当事者や地域のニーズに応えていく力を持っていたいと願っています。そのためには、法人全体はもちろんのこと、各施設においても、職員一人ひとりが、地域のニーズが私たちへの課題であることを認識し、それをみんなで共有し、同じ方向性を失うことなく進んでいければ、そこに答えが見えてくるのではないかと思うのです。

 昨年度に、法の一部改正が行われ、それまではまぼうで重症心身障害児()を対象に実施してきた通園事業が廃止となりました。時折聞こえてきてはいましたが、やはり当事者として唐突感は否めませんでした。このことにより、今まで利用されていた方の内、18歳以上の人ははまぼうと同じ生活介護事業の対象となり、乳幼児・児童は児童福祉法の児童発達支援事業や放課後等デイサービス事業の対象となることが示されました。

この法改正を受け、はまぼうとしては、主たる対象者を重症心身障害児()として、生活介護事業及び児童発達支援事業並びに放課後等デイサービスを一体的に行う、多機能型(定員5名)として、はまぼうとは別事業所(名称:あにまぁと)としてスタートすることにしました。定員は、児・者で区分せず、職員・設備については兼務・共用を可とする方向が示されたので、これまで併設して行ってきた通園事業とほぼ同じ捉え方で実施していく予定です。

具体的には、放課後等デイサービスは、特別支援学校等に通っている重症児(これまでも数名の方が利用されています)が対象となり、児童発達支援事業は重心の乳幼児が対象となります。ですから、これまではまぼうでは実践してこなかった保育、療育の視点からのアプローチが必要となってきます。重症心身障害のある方は、常に健康状態が安定しているわけではありません。これまで以上に、医療機関との緊密な連携が必要となってくることが予想されます。

平成1410月に重症心身障害児()通園事業がスタートして以降、はまぼうは、この地域において医療的なケアのある重心の人が利用できる施設として支援を続けてきました。今後も、充実した在宅支援(本人支援、家族支援など)となるよう役割を果たしていければと考えています。

(髙橋和己)

重症心身障がい児の在宅支援の現状について

<ふくはまの風 第16号 2010/12/27より>

 当法人の最初の施設であるはまぼうは、障がいの重い方も日中通える場所として、障がいの程度の別なく家庭から通える施設を目指してスタート。それまで、浜松の施設まで通っていた重症心身障がい(以下「重心」という)という重い障がいのある方も通うようになりました。

開所してしばらくした頃に、ある方が袋井養護学校(現在は「特別支援学校」)中学部に通っていた重心のお子さんのご家族と会う機会を作ってくださり、その時初めて、この地域に重心と呼ばれる人たちがたくさんいることを知りました。そして養護学校卒業後に通う施設がないことも知り、家族の方たちと協力し、高等部卒業に間に合うようにと、新たな施設建設に向けた活動を開始。結果として、施設建設は卒業時には間に合いませんでしたが、平成134月に、はまぼうに6名の重心の人たちが新たに通い始め、それが翌年の10月に国及び県の認可を受けて出発した「重症心身障害児者通園事業(B型施設~1日の利用人員5人を標準とする)」の実施につながることができたのです。

中東遠地域では、このような流れが主となって、つまり通所施設の併設的な事業として、重症心身障がいのある方の支援が進んできた経緯があるように思います。このことは、利用できる資源が少なかったときに比べれば、非常に大きな歩みなのですが、家族の方からしてみると、やはり重心の方が主たる対象者として利用できる施設の建設が望まれます。また中東遠地域では、この日中活動の場所の確保だけでなく、重心の方が利用できるショートステイ先がないことも大きな課題として挙がっています。現在は、浜松にある入所施設に行かないと利用できず、さらに希望者が多いため必要なときに利用できない現状があります。この地域は、重心の方が利用できる国立病院や入所施設がない地域なのです。

静岡県では、県内各地域から上がっていた重心の方の在宅支援への要望を受けて、一昨年に全県で対象者(重心)のご家族にアンケートを実施するとともに、その結果を踏まえた「重症心身障害児()の在宅支援のあり方勉強会」「施策検討会」(県障害者支援局が主催し、メンバーは委員長の増田樹郎愛知教育大教授をはじめ、家族の会である「守る会」、医療関係者(医師、看護協会、病院地域医療連携室)、福祉関係者等)を開催し、県副知事に提言書を提出しました。

県は、今年度この提言書にある施策に予算付けし、その動きがスタートしました。例えば、小規模多機能型利用事業及び県ライフサポート事業の重心単価の設定、また人材養成として、看護従事者及び介護従事者養成研修の実施などが挙げられます。さらに、重心に関わるケアマネジャー養成や関係団体等のネットワーク化に向けた動きも始まっています。

このような試みが、多くの関係者の協力の下に実を結び、できる限り地域格差の少ない静岡県になってほしいと願っています。(髙橋)

15年目に思うこと

<ふくはまの風 第14号 2009/7/7より>

当法人の設立は、平成6年12月、最初の施設であるはまぼうの開所が平成7年7月。月日の経つのは早いもので、法人もはまぼうも、15年目を迎えた。

 設立準備からのこの10数年は、駆け足で過ぎてきたようにも思える。地域に障がいのある人たちが生活し、その人たちが家族とともにずっと暮らしていきたいと願い、そしてその環境を作る役割が法人にあるとすれば・・・。振り返れば、私たちに何かできることがあるのだろうか、何ができるのだろうか、もしそう思わなかったとしたら、本人や家族のその思いの実現はますます遠くなってしまう、だから駆け足になったのかもしれない。

 社会には、生まれながらに障がいのある人や中途で障がいを持った方たちがいる。みんな同じ時を共有し、一日一日を暮らしている。そして、たとえ目には見えなくとも、助け合い、与え合って生きている暮らしがある。私たちが、この仕事に携わって続けているのも、その人たちから多くのものをもらっているからだと思う。

 私が今聞いている曲の中に、「僕の人生は早送りのビデオみたい」という歌詞がある。もしかしたら、これまでの流れは、「スキップ」を押した時のDVDの速さかもしれないと思った。速すぎる展開は、独断(勝手な思い)になりがちだ。そしてその速さに、周りは戸惑い、時には不安にもなる。しかし、その不安を打ち消してくれるのが、みんなの毎日の笑顔だった。「経験は制限と断念を生む」と書いた作家がいた。確かに自分がマイナスだと感じた経験は、普通はそうなのかもしれない。でも、みんなの気持ちが笑顔のもとでひとつになれた時は、そこから新たなエネルギーが生まれてくることも、経験の中から学んできたと思う。

 

 

 人には、生老病死の4つの苦しみの他に、さらに4つの苦しみがあるという。愛別離苦もその一つである。人はさまざまな理由で、その一生のうちに、愛する人と別れなければならない場面に必ず出会う。それは、家族であったり、友人であったり、好きな人であったり・・・。喜びも悲しみも楽しさも苦しさも、生きていればこそと言える。

 一昨年から昨年の短い間に、3人の若い利用者さんが病のために、早過ぎる死を迎えられた。3人とも、みんなが認めるほどに、精一杯生きてきた。その分、身近な人たちの悲しみは大きい。ましてや生まれてからずっと傍にいて見守ってきた家族の心は、察するに余りある。このことについては、いつか書く時が来るだろうと思いつつ、今日まで書けないでいた。

 生きていたときは、きっと珠玉のごとき光を放ち、周りを輝かせ、和やかにするその笑顔に、周りはどれほど勇気をもらったことだろう。生きる、生きているということは、自分にとって何なのだろうと、何度も繰り返し問うた一年であった。私たちのこれから生きていく道筋を、彼らが示してくれたようにも思ったりもした。生きていたこと(その声や思いや願い)が、他の人の心の中で生き続けている、そんな生き方を示してくれた彼らに、心から感謝している。(髙橋和己)

  

みんなにありがとう

<ふくはまの風 第13号 2008/11/26より>

 「きょうは、ブリヂストンの作業ありがとうございました。バリ取りの作業ありがとうございました。お掃除ありがとうございました…。」

 いつも楽しく帰りの会を進めてくれるSさんは、一日頑張ったみんなに向かって「ありがとうございました」の言葉をたくさん話しかけてくれます。私たちスタッフも毎日一緒にになって「ありがとうございました」をたくさん口にするようになりました。この言葉は、話す人にとっても、聞く人にとっても、気持ちのよい魅力的な言葉ですね。

 そるとぽっとは、昨年4月、障害者自立支援法の生活介護の事業所としてオープンし、今年の4月には新しい利用者さん3名を迎え、現在14名のみなさんが通っています。

 14名の中には、高等部を卒業後、そるとぽっとで社会人としての第一歩を踏み出した若い利用者さんも何人かいます。期待と可能性を秘めた、利用者さん一人一人の大切な時間を共に過ごすという責任の重さを感じています。

 障害者自立支援法に制度が変わったことで、サービスを利用する側も提供する側も以前にも増して厳しい環境になってしまいました。しかし、何といっても“法律の前に人(利用者さん)ありき!”利用者さん一人一人が自分らしく充実した時間を重ねて行く事が一番大切なはずです。

 時間や数的な結果のみに捉われず、一人一人の気持ちに寄り添って、みんなが気持ちよく頑張り励まし合いながら、お互いに「ありがとう」と言い合えるような雰囲気をいつまでも残していきたいと思っています。

 これからもご支援、ご指導をよろしくお願いいたします。

(そるとぽっとサービス管理責任者 河合裕孝)