重症心身障がい児の在宅支援の現状について

<ふくはまの風 第16号 2010/12/27より>

 当法人の最初の施設であるはまぼうは、障がいの重い方も日中通える場所として、障がいの程度の別なく家庭から通える施設を目指してスタート。それまで、浜松の施設まで通っていた重症心身障がい(以下「重心」という)という重い障がいのある方も通うようになりました。

開所してしばらくした頃に、ある方が袋井養護学校(現在は「特別支援学校」)中学部に通っていた重心のお子さんのご家族と会う機会を作ってくださり、その時初めて、この地域に重心と呼ばれる人たちがたくさんいることを知りました。そして養護学校卒業後に通う施設がないことも知り、家族の方たちと協力し、高等部卒業に間に合うようにと、新たな施設建設に向けた活動を開始。結果として、施設建設は卒業時には間に合いませんでしたが、平成134月に、はまぼうに6名の重心の人たちが新たに通い始め、それが翌年の10月に国及び県の認可を受けて出発した「重症心身障害児者通園事業(B型施設~1日の利用人員5人を標準とする)」の実施につながることができたのです。

中東遠地域では、このような流れが主となって、つまり通所施設の併設的な事業として、重症心身障がいのある方の支援が進んできた経緯があるように思います。このことは、利用できる資源が少なかったときに比べれば、非常に大きな歩みなのですが、家族の方からしてみると、やはり重心の方が主たる対象者として利用できる施設の建設が望まれます。また中東遠地域では、この日中活動の場所の確保だけでなく、重心の方が利用できるショートステイ先がないことも大きな課題として挙がっています。現在は、浜松にある入所施設に行かないと利用できず、さらに希望者が多いため必要なときに利用できない現状があります。この地域は、重心の方が利用できる国立病院や入所施設がない地域なのです。

静岡県では、県内各地域から上がっていた重心の方の在宅支援への要望を受けて、一昨年に全県で対象者(重心)のご家族にアンケートを実施するとともに、その結果を踏まえた「重症心身障害児()の在宅支援のあり方勉強会」「施策検討会」(県障害者支援局が主催し、メンバーは委員長の増田樹郎愛知教育大教授をはじめ、家族の会である「守る会」、医療関係者(医師、看護協会、病院地域医療連携室)、福祉関係者等)を開催し、県副知事に提言書を提出しました。

県は、今年度この提言書にある施策に予算付けし、その動きがスタートしました。例えば、小規模多機能型利用事業及び県ライフサポート事業の重心単価の設定、また人材養成として、看護従事者及び介護従事者養成研修の実施などが挙げられます。さらに、重心に関わるケアマネジャー養成や関係団体等のネットワーク化に向けた動きも始まっています。

このような試みが、多くの関係者の協力の下に実を結び、できる限り地域格差の少ない静岡県になってほしいと願っています。(髙橋)